市場価値が高まるクルマの2つの共通点

中古車最大のメリットは価格の安さにある?

中古車は新車に比べて安いというのはごく一般的なことのように思われますが、中古車であるにもかかわらず、新車よりも高値で取引されるようなクルマも一部には存在します。それらのクルマにはどんな共通点があるのでしょうか。クルマを購入しようとしているユーザーのなかには「できることなら新車で買いたい」と考える人も少なくないのではないでしょうか。

さまざまな事情から新車ではなく中古車を選ぶことになるユーザーは少なくありません。中古車を選択するもっとも大きな理由のひとつは、やはり予算面でしょう。現在、100万円の予算で購入できる新車はほとんどありません。強いていえば、ダイハツ「ミライース」やスズキ「アルト」の下位グレードなどが挙げられますが、100万円以下のグレードは、ビジネスユースを意識したモデルといえます。しかし大手中古車サイトなどで検索すると、100万円以下の中古車は国産車はもちろん輸入車もふくめて無数に存在します。当然、車両の状態は値段相応という場合もありますが、日常の利用にはまったく問題ないものも少なくありません。

すぐに手に入れることができる

このように「中古車は新車に比べて安い」というのが一般的である一方で、ごく一部には中古車のほうが新車価格よりも高いという例も存在します。最近では、スズキ「ジムニー」が一例として挙げられます。ジムニーは、生産能力の問題から、1年から2年程度という国産車では異例の納期の長さとなっています。そこで多少割高でも早く手に入れたいというユーザーニーズが生まれ、市場に流通しているジムニーの中古車価格が上昇するという減少が起こります。つまり「すぐに手に入る」という中古車のメリットが、新車のメリットを上回った結果といえます。

この「すぐ手に入る」という点は、中古車のメリットのひとつです。地方部への転勤などですぐにクルマが必要になった際などに、新車を買う予算がある場合でも、納期の短さから中古車を選ぶ例もあるようです。

希少性は重要なポイント

中古車が新車に比べて高いというもうひとつの例は、ホンダ「S660」のような「希少性」が挙げられます。すでに生産終了が発表されているS660は、当然のことながら今後新車が出てくることはありません。

またS660は、日本独自の軽規格のミッドシップスポーツカーという、極めて特殊なコンセプトのクルマです。ほかのメーカーを含めても、今後同じコンセプトのクルマが登場することはあまり期待できないことから、「軽規格のミッドシップスポーツカー」を求めている人にとっては、S660が最後のチャンスとなる可能性もあります。そのため、需要に対して供給(=市場に流通するS660の台数)が少なくなることが予想されることから、中古車価格が上昇していると考えられます。

国産車の場合、新車価格を上回る例はそれほど多くありませんが、中古車価格が比較的高いクルマは、現在、同様のクルマを新車で購入することができないといった、希少性に由来していることも少なくありません。

投資目的での中古車購入が増えている理由とは

ジムニーやS660は、新車価格が中古車価格を上回っている数少ない例のひとつですが、それでも新車価格の1割から2割程度の価格です。しかし、海外に目を向ければ、新車価格の数倍以上へと中古車価格が高騰し、さらには年々その市場価値が高まっている例も見られます。例えば、ポルシェなどはその最たる例です。いわゆる「ナナサンカレラ」と呼ばれる、1973年式の「911RS 2.7」などは、20年ほど前は1600万円程度だったものが、現在8000万円、ものによっては1億円を超えるものもあるようです。

これは極端な例ですが、ほかにも1990年代の911シリーズも軒並み中古車価格が上昇し、状態によっては新車価格を上回るものもではじめています。国産車では、日産「スカイラインGT-R」やトヨタ「スープラ」などの状態の良い個体が、1000万円を超える価格で取引される例もあるようです。また、国産車でもっとも市場価値が高いといわれるトヨタ「2000GT」は、1億円を超える価格で取引された例があるといわれています。

これらを「中古車」とひとくくりにしてしまうのは、あまりに乱暴なようにも思えますが、いったいなぜこれほど価格が高騰しているのでしょうか。

クラシックカーという資産

簡単にいえば、そのクルマを欲しがる人が増えているために価格が高騰しているということになりますが、そうした人々全員が「クルマ好き」のというわけでもないようです。市場価格が急激に高騰しているクルマを購入している人には、少なからず投資を目的としている人が存在するといわれています。円にしろドルにしろ、現金の価値は為替相場によって変化します。また、かつて100円でラーメンが食べられた時代があったけれどもいまはそうでないように、基本的には物価は上昇を続け、相対的に現金の価値が下がるものといわれています。

つまり、資産は現金で持つよりも、価値が変わらない、あるいは今後価値が上昇することが予想されるものに変えることで、資産全体の価値を守るという考え方が出てきます。成長企業の株を購入したり、ゴールドを購入したりといった方法があるなかで、クラシックカーへの投資も選択肢のひとつとして考えられるようになりました。

クルマは、いうまでもなく高度な工業製品です。そのため、個人レベルで製造することはほとんど不可能であり、メーカーが生産を終了した時点で、そのクルマの供給も終わり、希少性が出ることになります。つまり、今後新品は登場しない以上、保管をし続ければその価値はどんどん上昇していくことが期待されます。

国産車でもっとも市場価値が高いといわれるトヨタ2000GT

一方で、美術品のように「一品物」ということはほとんどないため、予算さえあれば比較的購入しやすいという特徴もあります。加えて、美術品のように保管が著しく難しいということもありません。メンテナンスをおこなう業者も比較的多く存在するのも魅力です。このように、資産価値の上昇が見込め、なおかつ比較的購入が容易で、なおかつ保存・管理がしやすいということから、一部のクルマの中古車価格が高騰していると考えられます。

では、いま新車で販売されているクルマを、長期間厳重に保管していれば、いずれは新車価格を超える値段で取引される可能性もあるのでしょうか。理論上は、どんなクルマでもいずれは資産価値があがることでしょう。ただし、市場から新車が消え、そして程度の良い中古車も消え、なおかつそのクルマを欲しがる人がいることが前提です。

ただし、いわゆる「ふつうのクルマ」がその域に達するのは、何百年という果てしない時を経る必要があるかもしれません。

Originally posted 2021-10-15 14:06:44.

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